2024年11月（2024年産当歳募集馬レポート）

新冠橋本牧場社長が開口一番、「母のナスカはサンデーサイレンス直仔という事もあって気が強いです。この仔も同世代馬に対して強気で、気に入らない相手が近寄ってくると耳を絞って追い払うように攻撃します。この母系はきつい気性の産駒が多いですが、それがむしろ競馬で良いほうに向いていると感じます。レースの馬群でひるむようなヤワなタイプにはならないでしょう」と評する。「ただ、普段はめちゃくちゃ可愛い顔をしていて、攻撃するときに見せる表情とのギャップが笑えます。その可愛さを売りにできるほどで、どんな角度でもその愛らしさが伝わるくらい」と目を細めた。「普段はその顔通りに利口で、会員さんへの馬見せのときなどはいつもの決まった場所に行くとすんなりポーズを決めてくれ、自分の仕事を理解している感じ。でも、媚びているわけではなく、『立てばいいんでしょ』的な雰囲気です。一度ポーズを決めるとまったく動かずに堂々としています。ところが、いつもとは違う方向へ向けると、仕事を終えたと思うのか活発になるので、自分で立つ位置を理解して的確に仕事を遂行している感じです」と話すように、賢さもピカイチだ。母のナスカについては「当場では最後のサンデーサイレンス繁殖牝馬ですが、年齢の割に見た目がかなり若く、まだまだ毛ヅヤが冴えているし、顔つきもキリッとしています。同世代の繁殖と比べると格段に若々しく、この仔のように良い産駒を産んでくれます」と話す。実際、孫の世代まで多くの活躍馬を輩出し続けているのだから、名繁殖牝馬といっても過言ではない。「競馬を経験していない事で負担が少なかったのか、馬体が傷んでいないのが良い結果に繋がっているように感じます。繁殖としてのエネルギーが十分に残っている状態で、この仔も同じ時期に生まれた馬よりも身体が立派でしっかりとしています。通常の高齢繁殖馬の産駒とは、ひとあじ違いますよ」と結んでくれた。あか抜けた好馬体で、頼もしく賢いうえ、飛び切りの美少女でもある本馬に、期待は膨らむばかりだ。


2024年9月（解説）

幾多の活躍馬が出ている「父ルーラーシップ×母父サンデーサイレンス」のニックスから生まれた好素材だ。母は未出走ながら、重賞を制したインティライミやサンバレンティン、オーバーザウォールの妹となる血統馬。既に12年の秋華賞と13年のエリザベス女王杯で3着に健闘したアロマティコ（父キングカメハメハ）を送り出しているが、これはあくまで序章に過ぎなかった。ナスカ一族は急速に勢力を拡大しており、孫世代では本馬の甥でもあるジオグリフが一昨年の皐月賞を制覇。アンデスクイーンが交流重賞を3勝すると、その産駒で曾孫世代のアンデスビエントは今年の関東オークスを制している。約2000年以上前に描かれながら、未だに人々を感動させ続けるナスカの地上絵と同じく、この一族も長く栄えることは間違いない。本馬は高齢の母の産駒となるが、そんな不安を一掃する好馬体の持ち主。橋本社長も「運動神経の良さそうな、バネのある動きをします」と自信満々だ。父はキンカメ産駒のルーラーシップなので、JRA3勝のカラルの全弟であり、アロマティコにも非常に近い配合となる。競走馬としての目標は、きょうだい初の重賞ウイナーになること。そしてゆくゆくは母として一族繁栄の一翼を担ってほしい。

2024年11月撮影

2024年8月撮影