INFORMATION
インフォメーション
インフォメーション

インフォメーション

ルーメン(リュシオル22)スペシャルレポート

募集馬情報

ルーメンの第一印象は「線の綺麗な馬」。もう少しで月齢30カ月を迎えようというのに、顔にはまだあどけなさが残り、キ甲も抜けきっていない。それでも、父親譲りとも思える薄手の馬体は、胸がぎゅっと引き締まり、四肢がスラリと伸びて優雅な歩様を見せる。人間で例えれば、少女が大人への階段を上り始めたときの危ういアンバランスさという感じだろうか。「だいぶ大人になりました。これまでは気性的に一筋縄ではいかなかった馬で、まだ課題は残りますが楽しみしかありません」とパッショーネのスタッフが口を揃える。

本馬の父リアルスティールは2016年ドバイターフの優勝馬である。幸か不幸か種牡馬ヴィンテージ世代に生まれたために国内G1タイトルには恵まれなかったが、3歳クラシック戦線において対ドゥラメンテは1勝2敗で、対キタサンブラックは2勝2敗と、レジェンド級の強豪相手にひけをとらない走りを見せた豊かな資質の持ち主なのだ。その能力はしっかり産駒に伝わっており、フォーエバーヤングはUAEダービー、サウジダービーを制してケンタッキーダービーでもあわやのシーンを見せた。レーベンスティールはセントライト記念など重賞2勝を挙げて、この秋は、父が成しえなかった国内G1制覇を目指そうかという逸材だ。また、全妹ラヴズオンリーユーは日本のオークス含め3か国で4つのG1競走を制した名牝で、史上初めて日米で古牝馬チャンピオンの勲章を獲得し、賢兄賢妹と称えるべき活躍を見せた。

一方、母リュシオルは3歳1月に積極的な先行策からダート1800mで初勝利を挙げると、続く芝1600mの自己条件戦では一転してメンバー最速の上りタイムで優勝。桜花賞TRアネモネステークスで1番人気に支持された素質馬だった。さかのぼればエフフォーリアやアドマイヤムーン、ヒシアマゾンなどを送るケイティーズ(愛1000ギニー勝ち馬)へと繋がり、本馬のおばスリープレスナイトも最優秀短距離馬という輝かしいファミリーだ。

当然ながら、繁殖牝馬としての期待も高い。その産駒は税別8600万円を筆頭に5頭連続セレクトセールで取り引きされ、総額は2億9100万円と、同セールを支えた繁殖牝馬の1頭だった。また、今年7月のセレクションセールにおいても本馬の全弟が2700万円で取り引きされるなど、さすがは現役オープン馬グリューヴルムの母親という貫録を見せている。少々乱暴に言わせてもらえば兄グリューヴルムの父キズナと本馬の父リアルスティールは4分の3同血馬だから、血統構成はよく似ている。

そんなルーメンは「自分を持っている馬」だという。育成を始めた当初、気分が乗らないと洗い場には入らないし、入ってもイライラしっぱなし。騎乗者が馬に気持ちを伝えるための扶助を使っても意に介さず、ムチを入れても反応がない。それでいて、気分良く走り出したら馬自身が納得いくまで止まらないこともあったという。「こういう馬は、決して多くはないけど一定数います」とパッショーネの西野代表が話す。ごく一般的な馬に比べて手はかかるものの、その経験上、競馬でよい成績を残す事が多いそうだ。とくに本馬の場合は、気分が良いときに見せるフットワーク、身のこなしにはキラリと光るものがあったという。

「入厩当初は硬さを感じたのですが、騎乗馴致を始めると後躯に緩さがあり、それでも短期間の間に芯が入りました」と西野代表。しかし、集中力が持続せず、「芝向きで、心肺機能的には1600mでも1800mでも十分にこなしてくれると思うのですが、現状ではその距離を走りぬく集中力が足りないと思います」という。そのため、本馬に課したのは「騎乗者をしっかりと意識させ、集中力を持続できるようになる」訓練だった。騎乗者とコンタクトが長くとれる角馬場でのハッキングに重点を置いて、坂路でのスピード調教ではなく周回コースで長めの距離を走らせるようなカリキュラムを中心に、障害練習もメニューに組み込んだ。

しかし、「好事魔多し」のたとえ通り、そうした成果が見え始めた矢先に右前肢の歩様が乱れて、右前脚の繋靭帯近位付着部炎と診断された。「理由は、急激に背が伸びたことに起因します。人間にも成長痛というのがありますが、同じようなものだと思ってください」と話す通り、骨が急激に成長したため腱の成長が追い付かず、そこに負荷がかかったため、一時的な炎症を起こしてしまった。完治してしまえば後遺症が出ることはないそうだが、不幸中の幸いだったのは「速い時計を経験させたあとだったこと」。調教負荷と炎症の相関関係は神のみぞ知るところだが、症状からすれば強い負荷をかけなくても発症した可能性も捨てきれない。もともと無駄肉が付くようなタイプではなく、仕上がりの早いタイプだけあってよい休養になったのではないかと前向きに捉えている。およそ2カ月間、舎飼いで静養し、6月上旬から調教を再開。すると、心身の成長を確実に感じ取ることができたという。

この日のメニューは1200mのダートコース周回コースに直結した直線800mの屋外坂路を2本。調教を再開してから初めての本格的な追い切りだ。手綱を取るのは、入厩以来ずっとルーメンとコンビを組んできた小澤悠さん。ウォーミングアップを兼ねた1本目、わずかな異常も見逃すまいと神経を集中させる。「休んでる間にだいぶ大人になりましたが、すごく負けん気の強い馬。前に馬がいると抜こうとするのです。ほかの馬に比べて加速力が凄いので、とにかく我慢させること。それが今日のテーマです」と話し、坂路に入っていった。本馬の負けん気の強さは曾祖父サンデーサイレンス譲りであり、奥行きのある血統背景がそれを増幅させているようだ。

2本目も、手綱はがっちりと抑え込まれたままだが、グングン加速する。美しいフォームで、夏の陽射しを浴びながらダイナミックに躍動した。大きくはない身体全体をいっぱいに使い、休養前のピッチ走法と同じ回転数をより大きなストライドでこなせているようにも見える。一糸乱れぬ脚さばきのままにゴールを通過する。この日のタイムは想定を超えた13秒台がマークされた。「人間の指示どおりに走れば楽だということを馬が覚えてくれたのかもしれません。どうやら反抗期も過ぎたようですね」と西野代表。「自分も出資会員の1人ですから、走ってくれないと困る」と笑わせてくれたあと、「休養前に比べるとストライドが伸びた大きな走りができるようになりました。追い切り後のメディカルチェックでも問題はないので、これから徐々に時計を詰めていく予定ですが、今日の気温(28℃前後で、新冠にしては高温)でこれだけの時計を出してケロッとしているのは心強いです」と笑顔を見せた。

騎乗した小澤さんは「エンジンがかかってからは少し飛びが大きくなっているなとは感じましたが、これほどの時計が出ていたとは思いませんでした。ハロン毎の完歩数は休養前と変わっていない感覚があるので、馬に騙されました」と恥ずかしそうにうつむいたが、本馬が披露した走りの手ごたえを、手綱を通して感じとったようだ。「だいぶ我慢できるようにはなりましたが、負けん気の強さは以前のまま。ここでのトレーニングはあとわずかな期間ですが、その強い気持ちについてこれるような強い体をしっかりと作っていきたい」と、9月のトレセン入厩に向けて力強い言葉で締めくくってくれた。

ちなみに、管理予定の栗東・鮫島一歩調教師は本馬が3歳となる来年2月に定年を迎えるため、その後はJRA初の女性調教師のもとへの転入を予定しているそうだ。それまでに勝ち鞍を挙げて、上級条件への出走をかなえてほしいと切に願う。

募集馬情報ページはこちら

出資予約ページはこちら